音を、伝える人が、語る、音。

モチベーション=ギャラの場合

  • 中谷 琢弥
  • あめのもりたけし

アーティストが伝えたいこと、届けたいこと。それは音以外の所でね。例えばメディアに乗ってインタビューされる時に伝えたいこととって何なんでしょう。

ん~、じゃあ逆に何が知りたいんでしょうね。音楽雑誌を読んでる人は。

ねぇ? たとえば「休日はなにしてるんですか?」とか……

そう。そういう“そのアーティスト自身”を知りたい読者もいますよね? 

でも「どのCDを買うか」っていう観点で読むなら、やっぱり「どんな音なのか」が知りたいと思うんです。それとは別に、その人のパーソナリティを知りたい人……それこそ「休日は何をしているのか」が知りたい人もいるでしょうけど。

僕はね、書き手なんで、もちろん読者とは違うポジションなんですけど、パーソナリティを知りたいんです。パーソナリティっていうか……思想を知りたい。音楽は別にどうでもいい。音楽は聴きゃいいから。

でも中谷君は基本的には商売の中で書いてるわけで、そういう意味では、何かを書くってことは、「CDを売るために」書くんですよね?

うん。CDを買ってほしいから書くんです。完全に。僕は常にミュージシャンの味方なんです。立ち位置としては。僕は評論家にはなりたくない。“批評”はできるけど、しない。よく言われる「最近の若い子は【評論家】ではなく【ライター】って言いたがる」の一人です、僕は。評論したくないんですよ。おこがましいですから。

なるほど。「おこがましい」……。

もちろんそういう文章も好きやけど、それやったら例えば吉田豪の“そのまま感”の方がすきやし、こねくりまわしたものより、そっちの方が好きかな。文章としてそっちの方が好きっていうんじゃなくて、やり方として、そっちの方が好き。

じゃあ中谷君の書いているものを読んで、「あ、このCD買ってみようかな」と思ってくれたらゴールだと。

そうそう。それが僕の着地点。

そのためにも方法論ってたくさんあると思うんです。

「その人がオモシロい人だ!」っていうのも一つ。

そうですね。その時の責任というか、ん〜、だってその人がオモシロくない人だっているでしょ?

いますね。

中谷君が書いたものを読んでCDを買った、と。でも人もオモシロくないし、曲もオモシロくない。そういうこともあるじゃないですか。

けどね、CDレビューだったら、CDを完全に指定されることはあんまりなくて……いや、たまにあるか……(笑)ん〜、例えばBOUNCEは、“載せない”っていうことが批評なんですね。載せるからには良いものなんです。だからBOUNCEはよく書かないといけない。もちろん「タワレコのCDを売るためだから」っていうのもあると思うけど。良くないことは載せないっていう批評の仕方で、僕はそれには賛成やし。載せるからにはよく書いてた方がいいけど、まあ……たまに指定でよくないこともあるけど、そういう時は、それとなく分かるように(笑)

(笑)でもね、ライターさんであったり批評家と呼ばれる人にしても、めちゃめちゃたくさん音楽を聴いてるわけで。

めちゃめちゃ聴いてますね。

アホほど聴いてるでしょ?

アホほど聴いてます。そこが素人との圧倒的な違いですね。

そうなったら、くだらない音楽の方が多いと思わないですか? 相対的に言ったら。

それはそうですよ。多いです。

「しょうもないなー」て思うものの方が多いでしょ?

もちろん多いですよ?

「多い」って感覚的にどれくらいですか? 6:4くらい? 7:3くらいですか? 何となくですけど。

え〜……、ん〜……半々。

へ〜。半分はまあまあ聴ける、と。

僕は結構……あ〜、いや、どうかなぁ。良くないものは聴かないんでね。

そこの扱いですよね。そういったものをライターとしてどう扱っていくのか。

ほんとに下らんもの……西野カナとか、そういったものですよね?

そうです。

たとえどんなに…… / 西野カナ

うん。あるある。全然ある。あるあるあるある。ありますよー(笑)

そういうものに対して書かないといけなことは今ありますか? ほんとにくだらないもの。

無記名だからこそ書いているんですけど、ローソンチケットのウェブではそんなの書いてますね。インタビューとかではないけど、ライブ紹介とか。浜崎あゆみとかね。河口……河口恭吾? そんなんも書いたなぁ。

そういう時のモチベーションは“仕事だから”というところですか?

はい。ギャラです。署名なしでいいし。


【第4回】「良い音楽の定義付け」を読む